今夜、あなたに復讐します
 ホッとしながら、
「だいたい、あなたは私のことが好きなんですか?」
と訊いてみた。

 どうもただ、流れに乗って結婚話が進み、私がすぐに頷かないので、意地になっているだけのようにも思えたからだ。

「好きだが。
 言わなかったか?」
と車窓の向こうに見える低い月を背に、真顔で有生は言ってくる。

 いやいやいや。
 そんな顔で言われると、ときめいてしまうではないですか。

 こうして見ると、普通に格好いいし。

 なんだか、社長みたいな人が好みのような気がしてくるではないですか。

 こんな人が私のことを好きなんて、あるわけないです。

 ……っていうのは、ずっと思ってますよね。

 ってことは、もしや、私はずっと社長が好きだったのでしょうか。

 いや、そんな莫迦な……。
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