今夜、あなたに復讐します
「強ければ、とりあえず、夏菜を守れるだろう」

 あのー、私の意思はどの辺に、と夏菜は思ったが。

 開け放したままの和室の向こう、庭先で聞いていたみんなは盛り上がっていた。

「どっちに賭けるか?」
「やはり、有生さんだろう」

「いやいや、あの指月とかいう男、目つきも身のこなしもただものではないぞっ」

 庭先で楽しげに賭けをはじめる弟子たちの間から、はいはいはいっ、と誰かが手を上げてきた。

「頼久様っ。
 私もぜひっ、その試合に参加させてくださいっ」

 銀次だった。

「お嬢を好きな気持ちなら、誰にも負けませんっ」

 おおーっとみんながどよめき、喜んだ。

「よかろう、銀次。
 お前も参加しろ」

 すると、はいはいはいっ、とまた誰かが割り込んでくる。

「僕も参加しますっ」

 雪丸だった。

「夏菜さんのことはちょっといいなーくらいにしか思ってませんけど。
 参戦したいですっ、楽しそうなのでっ」
と陽気に言ってきた。

「よかろう」

 いや、よくはないだろう。
< 354 / 432 >

この作品をシェア

pagetop