今夜、あなたに復讐します
 うっかり雪丸さんが勝ったらどうするんですか。

 ちょっといいなーくらいの人と結婚するハメになるではないですか、と思う夏菜を置き去りにして、すでに夏菜争奪戦の開催は決定しようとしていた。

「では、来週の日曜日。
 レースを行おう。

 一番にこの山を越え、夏菜の許にたどり着いたものが勝者だ。

 お前たち、幾らでも妨害してよいぞ」

 頼久の言葉に、おおーっとみなが盛り上がる。

「銀次っ、一歩も進めないと思えよ」
と兄弟子に言われ、銀次は、もう終わった、という顔をしている。

「これは意外と、誰からも狙われなさそうな雪丸が行きますかね」
と笑いながら加藤が言ってきた。

 ……確かに。
 なにが起こるかわからなさそうだ、と夏菜は青くなる。

 っていうか、日曜は社長と100均グッズの山とマンションでまったりな予定だったのに……。

「いやあ、私も妨害に参加してみましょうかねえ」

 楽しげにそんなことを言ってくる加藤に、
「いやあの、加藤さんが参加したら、選手も妨害する方もみんな音もなく、一瞬で倒されて、死屍累々になると思うんで……」

 私のもらい手が誰もいなくなりそうですよ、と思いながら、夏菜はただ茫然と盛り上がる男たちを眺めていた。



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