今夜、あなたに復讐します
 そんな夏菜を見て笑ったあとで、有生は、
「ま、たぶん、大丈夫だ」
と言ってくる。

 え? と有生を見上げた。

「お前の心が俺にあるのなら。
 たぶん、俺はこの勝負に勝てる――」

 そう言いながら、有生は、夏菜の手の上におのれの手を重ね、そっと口づけてくる。

 夏菜が逃げないことがわかっているかのように。
 押さえつけてくることも、不意打ちでしてくることも、もうなかった。



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