今夜、あなたに復讐します
「いやっ、投げ飛ばせませんよねっ? これっ」

 なんの騒ぎだ、というように指月が一瞬、扉の隙間から覗き、上林がその下から覗いてきたが。

 中で起こっている事態を確認すると、二人は、またそっと扉を閉めた。

「ちょ、ちょっとちょっと、指月さんっ?
 上林さんーっ?」

 助けてーっと夏菜は悲鳴を上げる。

「なんか楽しそうだから、引いたんだろう」

「楽しくないですよっ。
 っていうか、貴方、むちゃくちゃ強いじゃないですかっ。

 私も指月さんもいらないですよねっ?」

「いやいや。
 誰にも隙は生まれるものだからな。

 それを埋めてくれるのが、お前と指月だ。

 だがまあ、よくわかったろ。
 お前がその先輩を投げ飛ばしたのは、俺のせいじゃない。

 そいつが弱かったからだ」

 いや、話すり替わってますけど。

「明日も遅れずに来いよ」

 ようやく解放された夏菜は、
「もう来ませんっ」
と怒って帰ろうと扉に手をかけたが、後ろから、

「お前が居ないと、上林ひとりが此処の新人ということになって、指月に地味にちびちびイビられるんだろうな」

 そんなことをぼそりと有生が言ってくる。
< 40 / 432 >

この作品をシェア

pagetop