今夜、あなたに復讐します
有生に腕をつかまれた夏菜は、そのまま玄関ロビーに連れて行かれた。
受付で話していた小柄なおじさんに向かい、有生が叫ぶ。
「樫本部長。
会議のお茶出し要員がいないと言っていたな。
とりあえず、これを使え。
あとで引き渡す」
そう言われ、樫本はペコペコと有生に頭を下げていた。
このおじさん、どう見ても、この人の父親くらいの歳なんだが。
こんな大人な人たちにいつもかしずかれていたら、勘違い野郎にならないかな、この若造、と夏菜は有生を見上げる。
いや、なっているから、命を狙われているのかもしれないが。
とりあえず会社の業績は右肩上がりのようだから、お坊っちゃまのボンクラ社長ではないようだった。
有生は夏菜を見下ろし、
「うちは女子社員にお茶出しをさせない方針なんだが。
どうしてもペットボトルでは済まない会議もあるからな。
それ専門に誰か雇おうと思っていたところだ」
と言ってくる。
「あ、あの、私は貴方に復讐をですね……」
と言いかける夏菜の言葉をさえぎるように、有生は言ってくる。
「お前、日本人の美徳はどんなところにあると思うか」
「は?」