今夜、あなたに復讐します
まったく莫迦じゃないのか。
この俺があんな小娘に気があるみたいに指月の奴。
焼きが回ったな、と思いながら、有生が新幹線に乗っていると、向こうからマフィアがやってきた。
いや、マフィアでなかったら失礼なのだが。
そうとしか見えない男がやってきた。
実際にはボルサリーノのハットもかぶってなければ、首にマフラーもやってなかったのだが。
その顔つきだけで、今にも禁煙の車内で葉巻をくゆらせそうに見えた。
……目は合わせまい、となんとなく視線をそらす。
だが、ぴたりとそのマフィアは真横で足を止めた。
空いてません、と思わず心の中で言う。
グリーン車なので、席は指定だし、隣は指月だ。
座るはずもないのに、らしくもなくビクついてしまう。
そちらを見てはいないのだが、眼光鋭く自分を見ている気配がしたからだ。