今夜、あなたに復讐します
 


「藤原、喜んで帰りましたよ」
と夏菜が帰ったあと、指月が言ってきた。

「別に。
 たまたま目についたから買ってやっただけだし」
と帰り支度をしながら有生は言う。

「そうですか?
 なんかわざわざ回り道して買った気がするんですけどね」

「単に道を間違えたんだ」

「あの通り、まっすぐ行ったら駅でしたよ」
と言われ、有生はコートを羽織る手を止め、沈黙する。

「意外ですね。
 ああいうタイプが好みだったとは」

「別に好みじゃないし、好きでもない。
 あんな訳のわからない女に惚れるわけもない。

 好きになるような理由もないし」
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