蜜月身ごもり婚~クールな旦那様のとろ甘な愛に溺れそうです~【華麗なる結婚シリーズ】

なんとか体調を崩すことなく、打ち合わせを終えホッとしてエレベータで一階へと降りて、少しだけ何かお腹に入れたくて、飲食店が多く入るフロアへと寄ることにした。

しかし本来ならば、おいしそうな香りが漂う場所は、私にとってはダメだったようだ。
すぐに襲ってきた吐き気に、私は慌ててそのフロアを後にしてビルの外へと出た。
まだ日が長く十八時を回ってもまだ明るい街は、たくさんの人が歩いていが、そんなことは構っていられないと、すぐ目の前にあったベンチに座り、吐き気が収まるのを待つ。

「仕方がなかったんだよ」
不意に耳に入った声に、私はハッとする。

蓮人兄さまだ。

毎日聞いている声を私が聞き間違える訳がない。
木々が後ろにありお互い見えないが、その向こうにあるオープンテラスのカフェにいるのだろう。
顔を上げることが出来ず、私はそのままの姿勢で耳だけを傾ける。

「最低ですね」
次に聞こえた綺麗な澄んだ女性の声にハッとする。秘書の人も女性だし、別に話をしてもおかしくはないのは解っている。
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