蜜月身ごもり婚~クールな旦那様のとろ甘な愛に溺れそうです~【華麗なる結婚シリーズ】
「鏡花、もっとゆっくり歩け」
そんな思い出に浸っていた私だったが、後ろから慌てたように聞こえた声に苦笑する。
もうすぐ出産予定日の休日、陣痛を促進するためにも運動がてらのんびりと蓮人兄さまと散歩にでたのだが、蓮人兄さまが仕事の電話をしている間に、一人でうろうろとしていたところに今のセリフだ。
「大丈夫これぐらい。多少歩かないといけないって先生も言ってたでしょ?」
最近の私はようやく敬語が取れ、”兄さま”を取ることが今の目標だが、なかなか数十年の月日は長かったようで難しい。
外はまだ空気は冷たいが、木々はところどころ緑が芽吹いていてそれを見ていたら、ついつい足が進んでしまったのだ。
「ダメだ」
仕事はもちろん今までのプライベートでは焦ったり、慌てたりすることのなかったはずの蓮人兄さまだが、私の前では全く違う顔を見せてくれる。
そのことがすごくうれしくて愛おしい。