蜜月身ごもり婚~クールな旦那様のとろ甘な愛に溺れそうです~【華麗なる結婚シリーズ】
「蓮人さん、お腹痛いかも……」
いや、かもではなく確実に痛いのだ。しかしまだ感覚は長い。だから家に戻ろうと言った私の言葉はもう聞こえておらず、蓮人さんは慌てたようにスマホを出す。
「え? 救急車? 大丈夫か?」
「落ち着いて、まだ大丈夫だから。とりあえず家に帰ろう」
母は強しという言葉を思いだす、なんとか痛みに耐えながら家に帰り、入院バックの中身を確認する。
「鏡花、荷物はこれだけ?」
「うん。蓮人さんがいる時に陣痛来るなんて、本当に親孝行な子だね」
痛みに耐えつつ笑顔を見せれば、蓮人さんはそっと私を後ろから抱きしめた。ただそれだけで何も言わない蓮人さんだが、その気持ちが手に取る様に分かり私はそっと頬に手を伸ばす。
「大丈夫だからね」
「男は本当に無力だな……」
呟くように言った蓮人さんに、私は明るく声を掛ける。
「一緒にいてくれるだけでどれだけ心強いかわかる? パパ」
「鏡花……」
「いったーい」
温もりを感じていたかった私だが、耐えがたい痛みについ声が出た。分数を図れば感覚も短くなっている。
「もうそろそろ病院かな」
蓮人さんに伝えると、私たちは病院へと急いで向かった。