蜜月身ごもり婚~クールな旦那様のとろ甘な愛に溺れそうです~【華麗なる結婚シリーズ】
縮まらない距離
あの日から2週間がたち、毎朝恒例になっているセリフを口にする。

「蓮人兄さま、朝食だけでも」

それが合図のように、蓮人兄さまはため息を付きながらダイニングテーブルの方へと向きを変えた。

夜は遅く顔を合わせないため、私と蓮人兄さまとの距離は縮まらない。
少しでも同じ時間を過ごしたくて、朝食だけは勇気をだして声をかけている。

しぶしぶ座る蓮人兄さまに、申し訳なさもありつつ、なんとか少しでも仲良くやりたい、そんな気持ちで無理に明るい声をだす。

「また食べないつもりでしたよね、迎えが来る前ではまだ時間はあります」

本当は私とは過ごしたくないのかもしれない。そんな気持ちを押し殺すと、あまり食欲のなさそうな蓮人兄さまに中華がゆを出す。

薄味だが、出汁が聞いていて食べやすいはずだ。
薬味はあっさりとネギと蒸したささみだけだが、食べないよりはいいだろう。
「うまい」
私がキッチンに行くと、きつく見える兄さまがホッと表情を緩めるのをこっそり盗み見るのが、今の私の楽しみだ。

温かいお茶を入れると、蓮人兄さまの目の前に置く。
6人掛けのダイニングテーブルだが、蓮人兄さまの正面に座る勇気はまだなく、蓮人兄さまの斜め前に座った。
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