蜜月身ごもり婚~クールな旦那様のとろ甘な愛に溺れそうです~【華麗なる結婚シリーズ】
「なんで? 私がきれいじゃないから? あの秘書の人みたいになれば蓮人兄さまは抱いてくれるの? こんな黒髪! こんな……」
もはや涙でひどいことになっているだろう。あの人みたいにキレイなどなれない。なのにさらに自分を醜くしていく。
もう終わりだ……。
いくら酔っていたとはいえ、今まで我慢してきたことをこんな形で発散するなんて。
蓮人兄さまだって、選ぶ権利はあるはずだ。こんな地味で嫌いな女なんて……。
そろそろと蓮人蓮人兄さまと距離を取ろうとすると、いきなり後頭部を引き寄せられる。
初めて見たかもしれない蓮人兄さまの、悲し気な瞳の中に宿る熱のようなものを見た気がした。
「後悔するなよ」
その言葉をものすごく近くで聞いた気がしたが、すぐに激しく唇を塞がれた。
私の初めてのキスは、涙と血の味がした。自分の唇が切れたのか、蓮人兄さまの物か。
そんなことすらもう分からない。ただ、私は初めての蓮人兄さまの熱に翻弄された。