蜜月身ごもり婚~クールな旦那様のとろ甘な愛に溺れそうです~【華麗なる結婚シリーズ】
「昨夜……」
黙って聞いていた私に、蓮人兄さまはもう一度〝昨夜”という言葉を繰り返して言葉を止める。
それだけで、昨日の記憶がよみがえってしまい、顔に熱が上がるのがわかった。

今さら何を言われるのだろう。どう話すべきか悩んでいる蓮人兄さまに、私は言いようのない感情が広がる。

忘れてくれ、なかったことにしてくれ、どの言葉を言われても、頭では理解はしているが蓮人兄さまの口からききたくない。
そんな思いから、私は蓮人兄さまの顔を見ることなく、こちらから口を開く。

「わかっています。昨夜のことはなかったことにします。本当にごめんなさい」
一気に言って私は小さく息を吐く。きちんと立場をわきまえていると分かれば、蓮人兄さまも安心するに違いない。

そう思って蓮人兄さまの返事を待つも、意外な言葉が帰ってきて愕然とする。
「そうはいかない」
< 81 / 189 >

この作品をシェア

pagetop