蜜月身ごもり婚~クールな旦那様のとろ甘な愛に溺れそうです~【華麗なる結婚シリーズ】
鹿威しの音がやけに滑稽に感じるのは、私の気持ちのせいだろうか?
結婚しろと言われ続けていた時とは違う複雑な心境で、私はお母さんに持たせられた薄いピンクの小紋の訪問着を着て実家の茶室にいた。

そこで、にこやかに微笑むお母さんと、いつも通り真顔でお茶をたてるお父さん。それを完ぺきなスーツ姿の蓮人兄さまが慣れた手つきで、立てたお茶を飲んでいるのを盗み見ていた。


「本当によかったわ。真翔君ではなく蓮人君っていうのは驚いたけど」
お母さんのそのセリフに、私は心の中でため息を付く。そんなことを今言わなくてもいいのに。

完璧な仕事モードの笑みを浮かべて、そんなお母さんに「ええ」と答える蓮人兄さまは何を思っているのだろう。

「それでお式はどうするの?」
「お互い準備もありますので、まず先に籍を入れさせていただきたく今日は参りました」
その言葉にお父さんが珍しく、私たちの方を見た。
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