蜜月身ごもり婚~クールな旦那様のとろ甘な愛に溺れそうです~【華麗なる結婚シリーズ】
「鏡花、お前はもっと自分の好きにしていいんだよ。何かあればいつでも帰ってきなさい」
小さいころから稽古や勉強にと厳しさしか感じてこなかったお父さんのその言葉に、私はなんとも言えない気持ちが広がる。
いつもお姉ちゃんのおまけぐらいにしか思われていないと思っていた。
「はい」
頷いて見せれば、安心したようなお父さんに私も笑顔を向けた。
「鏡花、行こうか」
そんな私に蓮人兄さまが声を掛ける。小さく頷くと私たちは実家を後にした。
蓮人兄さまの運転する黒のドイツ車の助手席に乗ると、その足で婚姻届けを提出した。
あっさりと受理されたことにも驚いたし、紙一枚ですべてが変わったことがまだ信じられなかった。
それは当たり前だろう。籍が入ったからと言って、私と蓮人兄さまの関係性がかわるわけではない。
これからもまた今まで通りの生活が続くのだから。
そう思いながら、私は車の窓から東京のビルをぼんやりと眺めた。