俺の嫁は♂だけど愛してます
3

そういえば、今日は久しぶりのデートだ。

助手席の渚は分かりやすくも楽しそうで可愛い。
話を聞けば来週から電車通勤だそうな、心配だ。

最近は男も痴漢されるし、渚なら痴漢されかねない。なんなら車で送って行ってやるのに自分の方が出る時刻が早いからと遠慮する。

いっその事、防犯ブザーでも持たせてやろうか。
いや、女性専用車両にでも乗ったほうが良いのでは?

同僚に渚とのことを話すと「過保護」と言われる。
仕方がない、渚が可愛過ぎるのだから。

それに、普段から渚は甘えてこない。
だからこそ、とても可愛い。

──────────────────────────

着けば車を止めて、2人で歩く。
中々人前で手は繋げないが、お互いにぴったりと寄り添う。

「最初はどこから行くんだ?」
と隣を歩く渚に尋ねれば服屋につれて行かれる。どうやら汚れても良い安めのTシャツが何着か欲しいらしい。

店に着けば安売りの札の着いたTシャツをワゴンから選ぶ。
「僕のサイズない…大きいのしかない」

と渚がワゴンを見ながら呟く。
渚は成人男性にしても小柄だ、このTシャツは俺でも少し大きめだから渚には大分大きいだろう。
…今朝のTシャツみたいに。

悩んでいた渚だが、緑のTシャツを3枚程買った。
ふと俺も寄りたいとこを思い出したので文房具店に行く、昔から使っていたボールペンのインクが無い為探す。
運良く見つかり、ファイルと共に買う。


その後は少し遊ぼうということでゲームセンターに行く。

「見て!これ可愛いね、だき枕」
とUFOキャッチャーの景品を指差す渚。
なんとも可愛いとは言い難いリアルなサメの抱き枕だが、渚には可愛いのだろう。
伊達にUFOキャッチャーは得意だ、決して渚を甘やかすわけではないが取ってやろうと思う。

「お前が抱き枕で寝たら俺とは寝てくれないの?」
なんて拗ねた振りをしながらもお金を投入する。

「そ、そんなことないって。…巧とも寝るし」
慌てて弁解する渚に笑いつつも2回ほどで落とし頭を撫でてサメとついでに落ちてきた小さく可愛らしい魚のぬいぐるみを渡してやる。

「わぁ……ありがとう!」
2つを大事そうに抱えてゲームセンターを出れば、通路に泣いている女の子がいた。
迷子だろうか、周りを見渡しても親御さんらしき人は見当たらない。

どうしようか、と渚を見れば渚は女の子に近寄っていた。
ゆっくりとしゃがんで目線を合わせれば
「どうしたの?…パパとママとはぐれちゃったかな?」
と微笑み優しく尋ねていた。

< 4 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop