わたしにしか見えない君に、恋をした。
第一章

偽りの笑顔

「ねぇ、知ってる?ちょっと聞いた話なんだけどさぁ、明子って隣のクラスの佐伯君に告ったらしいよ」

休み時間、あたしの机にやってきたサエコは目を輝かせてそんな話を始めた。

あたしは心の中で深いため息をつく。

……超ダルい。

うんざりするあたしとは対照的に、周りにいた女子たちが「何々?何の話?」と興味津々といった様子で近づいてくる。

自慢話のときは寄ってこないくせに、噂話になると飛びついてくるなんて。

でも、楽しそうなみんなと同じように作った笑顔を浮かべて、さも興味がありますよっていう風に話を聞いているあたしもあたしだ。

同じ穴のムジナ。

サエコは人に注目されるのが大好きで、いつも輪の中心にいる。

もちろん自分の話題だけじゃなく人の話題も全部かっさらっていく。

あたしの中での彼女の位置づけは女王様。

サエコはあっという間にクラスメイトの女子たちに囲まれて、鼻を鳴らしながらご満悦といった様子で話し始めた。
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