わたしにしか見えない君に、恋をした。
傷付かないためには今何をしたらいいのか先回りして考えて、みんなの顔色を伺って、誰にでもいい顔をしようとしてた。

あたしは結局、自分が一番可愛かったんだ。

「怖かったの。ひとりぼっちになることが……。教室の中に居場所を失いたくなかった。だから――」

息が詰まる。でも、ちゃんと伝えなくちゃ。あたしの嘘偽りのない言葉を、想いを。

「だから、サエコとナナに嫌われないようにって気を遣って、自分の言いたいこと言わずに我慢して……。二人に嫌われるのが嫌で明子のこと見て見ぬふりをしたの。あたし、最低な人間なの」

「流奈ちゃん、そんなこと言わないで……?流奈ちゃんは最低なんかじゃないよ」

「ううん、最低だよ。自分が傷付きたくないからって明子を傷付けていい理由になんてならない。そんなことしたらいけないって分かってたのに。それなのに……」

自分を守るために誰かを傷付けることなんてしてはいけない。

そんな当たり前のことからあたしは目を背けていた。

自分自身に必死に言い訳をして。

ごめんね、明子。もう二度とあたしは明子を傷付けたりしない。

決意したと同時に涙が溢れた。

「る、流奈ちゃん!ど、どうして泣いてるの……?」

「ごめん。本当にごめん……今までたくさん傷付けたよね。辛かったよね……。本当にごめんね」

「や、やだ!!そ、そんなことないよ。大丈夫だよ。だから、泣かないで?ねっ?」

泣き出したあたしを見てオロオロしながらポケットに手を突っ込んで何かを探す明子。

< 104 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop