わたしにしか見えない君に、恋をした。
「ナナ、お昼いこ!」
案の定、昼休みになるとサエコはあたしを露骨にハブりナナとともに教室を後にした。
ザワザワとうるさい教室の中にぽつんと一人取り残されたみたい。
喧騒が嫌でも耳に飛び込んでくる。
と、そのとき「る、る、流奈ちゃん」と背後から誰かが声をかけてきた。
振り返るとそこには表情を少しだけ固くして緊張した面持ちの明子が立っていた。
「まさか明子が誘ってくれるなんて思わなかった」
あたしは明子に誘われて裏庭にやってきた。ベンチに揃って腰かけてお弁当を食べる。
「と、突然ごめんね。でも――」
「分かってる。あたしを心配してくれてたんだよね?ありがとう」
「もしかして……サエコちゃんとナナちゃんと何かあった?」
「うん。あたし、自分の気持ち正直に伝えた」
「それって私のことだよね?私の体操着のことだとしたら……」
「違うよ。それだけじゃない。あたし、ずっと思ってたから。こんなことしたくないって。しちゃダメだって。だから、それを伝えただけ」
「流奈ちゃん……」
「あたし、サエコとナナと一緒にいるときずっと無理してた。放課後毎日一緒に遊ぶのもきつかったし、SNSで四六時中連絡を取り合うのもしんどかった。でも、友達でいるためにはしょうがないって自分にいい聞かせてた」
「うん……」
「あたしは多分、明子に嫉妬してたんだと思う。普段は大人しいのに、言いたいことはちゃんといえる明子が羨ましかった。あたしは明子みたいになりたかったのかも」
「そ、そんなことないよ!」
あたしの言葉に明子はブンブンっと大袈裟なぐらい首を振って否定した。