わたしにしか見えない君に、恋をした。
後ろからきた選手の足音も近付いてきている気がする。
それでも走った。走るのをやめなかった。
最後まで走りきる。絶対に。絶対にあきらめない。
体が風を切る。周りから聞こえる歓声に体が包み込まれる。
「流奈―――!!頑張れーーー!!!」
視界の端っこでサエコとナナが大声で叫んだのが見えた。
声、大きすぎだから。心の中で苦笑する。
でも、嬉しい。ありがとう。
必死になって走り続ける。
一人に抜かれてしまった。でも、あたしは最後まで走ることを諦めなかった。
遅くたっていい。抜かれたっていい。最後まで走り続けることに意味がある。
「ハァハァハァ……」
次の子にバトンを渡し終えたあたしは膝に手をついて呼吸と整えた。
リレーの結果は2位だった。1位こそとれなかったものの、大健闘だ。
「2位……?すごい、やった!」
「うちらすごくない!?」
リレーメンバー全員で抱き合って喜ぶ。その瞬間、さっきまでの疲れは吹き飛んでいた。
達成感が全身を包み込む。
エライ、流奈。頑張った!!最後までちゃんと走った!
最後まで走り切った自分をあたしは心の中で褒めちぎった。
湊、見ててくれた?あたし、最後まで走り続けたよ――。