わたしにしか見えない君に、恋をした。
「あたし、流奈にちゃんと謝った。言いたいことも言った。アンタも言いたいことあるなら言ったほうがいいんじゃない?」

サエコにうながされてナナが口を開く。

「あたしも……色々ごめん。明子だけじゃなくて、流奈の悪口も……サエコの悪口も言った」

「は!?あたしの悪口って何!?」

ナナの言葉にさっきまで涙を浮かべていたサエコが反応する。

「流奈のこと八方美人って言ってたけど、それあたしのこと。悪口言って仲間増やして安心しようとしてた。明子が離れてからは3人組になっちゃったし、サエコと流奈が仲良くなって自分がハブられたらどうしようってそればっかり考えてた」

「そんなこと考えてたわけ?」

「そりゃそうだよ。教室の中で一人になんてなりたくないもん。居場所失いたくないし」

「ナナ……」

その気持ちが痛いほど理解できた。あたしもずっとそう思ってたから。必死に居場所を守っていたから。

「あたしもサエコとナナに謝らなきゃいけないことがある。あたし、二人に嘘ついた。本当はあんまカラオケ好きじゃない。嫌いじゃないけど、毎日はキツイよ。SNSも毎日やるのはめんどくさい」

「流奈……」

「バレてると思うけど一緒に帰るのがめんどくさくて用事あるって嘘ついたの。ハッキリ言えばよかったのに二人に嫌われてくなくて言えなかった……」

「なにそれ。そんなん言ってくれればいいじゃん!うらち友達なんだからさ」

「そうだね……」

「うちらってなんかバカじゃね?」

3人は目を見わせるとブッと吹き出した。

みんな、本当は不安だったんだ。

でもその不安を口にすることはできなかった。

弱みを見せることができなかった。

「口にしなくちゃ分からないことってたくさんあるんだね」

あたしの言葉にサエコとナナは目を見合せた。

「じゃあ、これで仲直りってことでいいよね?」

サエコが上から目線で言う。

「まぁ、いいんじゃない」

ナナがそう言って頷く。
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