わたしにしか見えない君に、恋をした。

残された時間


「……――ただいま!!」

「流奈!おかえり。体育祭はどうだった?」

玄関の扉を開けて靴を脱ぎ捨てて二階に上がろうとした時、母に呼び止められた。

「総合では2位だった。愁人のクラスは1位だったよ。アイツ運動神経良いしムカつくぐらい活躍して女の子にキャーキャー言われてたよ」

「そう。そうなのね……」

「どうしたの?」

母の顔が曇っている。

「愁人のことなんだけど……あの子、学校とか部活とか……うまくやってる?」

「なんで?」

「1か月くらい前からちょっとあの子、変なのよ。帰ってくるのも毎日22時近いのよ。夕飯も全然食べないし、元気がないの。何か知ってることない?」

もしかしたら……。金山先輩の顔が脳裏を過る。

「わかんないけど、愁人にも色々あるんじゃない?あとで話聞いとくよ」

「そう?お願いしてもいい?」

「分かった」

あたしの言葉に母はほんの少しだけホッとしたように表情を緩めてリビングに戻っていった。

あたしはカバンを肩にかけ直して階段を駆け上がる。

はやる気持ちが抑えられない。

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