わたしにしか見えない君に、恋をした。
二人の体温が心地よく交じり合う。

初恋が幽霊なんてしゃれにならない。

でも、好きなの。大好きなの。

もう湊なしでは生きていけない。こんな気持ちを知ってしまった今、あたしは湊を手放すことなんてできるはずがない。

「湊……」

でも、それはあたしのエゴだ。ずっとここにいて欲しい。自分の隣にいて欲しい。
それは儚い願いだ。

例え幽霊だとしてもこの場所にとどまってほしいと切に願う。

でも、それが湊のためになるのかは分からない。

49日……湊が天国へ昇っていく日は近いはずだ。

だとしたら、きっと、あたしにできることは限られている。

目の前の湊を笑顔にする。それが今、無力なあたしにできること。

湊の幸せを一番に願う。

好きだから。大好きだから。

涙をぐっと堪えて、自分の気持ちも全部全部堪えて、あたしは笑顔を浮かべよう。

「今日はベッドを貸してあげるね」

あたしが微笑むと、湊は目を細めた。
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