わたしにしか見えない君に、恋をした。
「……湊。どこにいるの……?」

さっき座っていた観客席に戻ったものの、湊の姿がない。

キョロキョロとあたりを見渡しても、どこにもその姿を見つけられない。

妙な胸騒ぎがする。

でも、あたしには湊を探す術がない。

「今日の試合はどうかな~?お前、どっちが勝つと思う?」

「普段だったら星城の圧勝じゃね?あそこの選手層厚いし」

「だよなぁ。でも、流川いないし今回は無理じゃね?流川抜けてからチームバラバラみたいだし」

「だよなぁ。あの穴はでかいな」

振り返ると、あたしの後ろには高校生風の男子二人がいた。

「あっ、あの……!」

突然声をかけたあたしに二人は不思議そうな視線を送る。

「る、流川って……」

自分のスマホカバーの中に入れていたプリクラを一枚引っ張り出す。

「嘘……」

あんなにハッキリ映っていたはずの湊の姿が薄れている。

でも、まだ完全に消えてしまったわけではない。

「流川湊って、この人ですか……?」

彼らにプリクラを見せると、二人はジッとプリクラを見つめた後互いの顔を見合せた。
< 138 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop