わたしにしか見えない君に、恋をした。
「ひでー顔だな」って絶対にケラケラ笑う。
あの笑顔が好きだった。普段は大人っぽいのにくったくなく笑うところが。
頭を撫でる時の大きな手のひらが、抱きしめる時の力強い腕が、低い声が、シャープな横顔が。
辛い時や悲しい時、あたしの隣にいてくれた湊が、好きだ。
「好きなの。どうしようもなく……湊が好き……」
声が震える。
湊がいなくなるなんて。なんだか夢を見ているみたい。
本来なら湊がいる生活が夢で、いない生活が現実のはずなのに。
夢でもいい。一目でもいい。また、湊に会いたい。
「湊……会いたいよ……」
湊のいない世界であたしは生きていたくなどない。