わたしにしか見えない君に、恋をした。
「姉ちゃんに1万借りたのも先輩の病院に毎日お見舞いにいっていたからなんだ」

「夜遅くに帰ってきてたのも……?」

「面会は21時までから」

「だから、帰ってくる時間がいつも22時すぎだったんだ」

全ての点と点が線になる。

「でも、姉ちゃんがどうして湊先輩と……?本当に3週間前だとしたら、先輩は病院のベッドの上にいたはずなんだ」

「わかんないけど……。でも、確かにあたしは湊と出会ったの。湊があたしのそばにいてくれた。それは紛れもない事実なんだよ」

「でも……」

いまだに信じられないという表情を浮かべている愁人。

確かに信じられないよね。あたしだって信じられなかったもん。最初に湊を見た時、受け入れるまでに時間がかかった。

ましてや愁人は湊のことを知っているし、すぐに理解することは難しいかもしれない。

「分かった。姉ちゃんの話は信じる。でも湊先輩は今どこに……?」

「消えちゃったの。今日、愁人の試合の途中に……」

「そんな……」

「ねぇ、今日は湊の病院にお見舞いに行ったの?」

「今日試合で忙しかったら行ってない」

「だったら、今から一緒に――」

湊に会いに行きたい――。

そう言いかけた瞬間、愁人のスマホがけたたましい音を立てて鳴りだした。
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