わたしにしか見えない君に、恋をした。
最終章
失った記憶
6時起床。7時朝食。9時回診。10時検査。12時昼食。13時リハビリ。14時入浴。18時夕食。22時就寝。
ここ数日の俺のルーティーンだ。
大部屋の空きがないからという理由で個室にされたせいで、病室内は常に静かだ。
わずかに開いた窓の隙間から吹き込んだ風がカーテンを揺らす。
「……――湊先輩」
「おぉ、愁人か」
面会時間ギリギリにやってきた愁人が病室にやってくる。
そうだ。愁人が来るのもルーティーンになっていた。
「毎日部活の後にくんのきついだろ。そんなに気遣うなよ」
「いや、俺が来たくて来てるんで」
「なにそれ。お前、俺のこと好き?」
「……はいっ!?なんでそうなるんっすか!」
「来たくて来てるとか、言う?」
「いや、だから、それは……――」
「いいっていいって。お前は可愛い弟みたいなもんだから」
「だから、そういうんじゃ……」
ブツブツと何かを呟きながら唇を尖らせた愁人。
「で、アイツにまたなんかされてない?」
「金山先輩ですか?」
「そう」
「……大丈夫です」
「ホントか?」
「はい。自分で何とかします」
強張った表情を浮かべたところからすると、いまだに金山にあれこれ嫌がらせをされているようだ。
「3年はもう少しで引退だし、あとちょっとの辛抱だな。でももし無理なら早めに言えよ?話ぐらい聞いてやれるし」
そこまで言ったところで、心の中がモヤッとした。
以前、そのセリフを口にしたことがある気がする。