わたしにしか見えない君に、恋をした。
「確か彼女は流川さんと同い年だったよ」

「へぇ……」

「高2だって。でも、まさか知り合いのお姉さんと同じ病院に入院して同じリハビリ室でリハビリを受けているなんて信じられないね。奇跡的だ」

「奇跡……?」

「まぁこの世の中はすべて奇跡みたいなもんなんでしょうね。こうやって僕が流川さんのリハビリのお手伝いをしていることも奇跡みたいなもんだし。あっ、もう少し頑張ってくださいね」

ペラペラとしゃべっている間も山口さんは俺の足を休ませようとはしない。

「うん。いい調子だ。でも流川さん、彼女のことが気になって気になって仕方がないって顔に書いてあるよ」

「え?」

「そんなに分かりやすく目で追ったらバレバレですよ」

「別に見てないです」

「はいはい。じゃあ、もう少し頑張りましょうね」

山口さんの言葉が右の耳から左の耳へ流れていく。
何も頭に入らない。

どうしてだか自分でも理解不能だ。ただ、彼女のことが気になって仕方がない。

視界に彼女を捕えたいと願ってしまう。

今すぐ彼女の元へ行きたいと、行かなくてはいけない……そんな気持ちになる。


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