わたしにしか見えない君に、恋をした。
ホイッスルの音。サッカーボールを追いかける自分の足元。飛び散る汗。早まる鼓動。耳をつんざく歓声。『湊、パス!』俺を呼ぶ誰かの声。

「うっ……」

「湊!!大丈夫!?」

頭が痛む。顔を歪めて頭を抑える俺の顔を流奈が心配そうにのぞき込む。

『湊先輩は俺の憧れです』

今よりも幼い愁人の笑い顔。

頭が割れそうに痛い。何だこれ。何なんだよこれ。

ラーメン屋の前で愁人が一方的に殴られている。男の間に割って入るとアイツはへらっと嫌な笑みを浮かべた。

『こいつの姉ちゃん、可愛いんだよ。今から愁人に呼び出させるから流川も一緒に遊ぼうぜ?』

何言ってんだ、こいつ。愁人の姉ちゃんを呼び出して何する気だ……?

そんなこと絶対にさせない。

『お前、最悪な野郎だな』

俺の言葉に男は激高して、あろうことか愁人を殴りつけた。

そして、俺は愁人の下敷きになり頭をアスファルトに打ち付けた。

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