わたしにしか見えない君に、恋をした。
「流奈、なんかあったの?目の下クマできてるよ?」
翌朝、学校に着くなりナナはあたしの顔をまじまじ見つめた。
「うん。ちょっといろいろあって疲れてて……」
「夜送ったメッセージも既読になんなかったし。どうしちゃったの?」
「あぁ、ごめん。ずっとスマホ見てなかった。もうほんとそれどころじゃなくて……」
「なに?また金縛りとかいうわけ~?」
「金縛りだけだったらどんなによかったか……」
あたしの呟きにナナは不思議そうに首を傾げた。
予想通り、あたしのすぐそばにいる湊の姿は誰の目にも映っていないようだ。
あたしにはこんなにもはっきり見えるのに。
180センチはありそうな長身。細身だけど、筋肉質で肌は黒い。
黒髪。前髪はちょっと長め。
目鼻立ちは整っているし、顔も小さい。
手足も長いしスタイルは抜群。悔しいけど、かなりのイケメン。だけど、性格は最悪。そして口も態度も悪い。そして、幽霊。
授業が始まってからも、湊はあたしの隣にいた。
昨晩は湊のせいでほとんど眠れなかった。
『さすがに寝るときと風呂の時は出て行くから』
湊はさらりと言っていたけど、そんなの当たり前だ。
今になって訪れた眠気を我慢しつつ、黒板の文字を適当にノートに写すあたしの横で湊がそっと囁く。
「おい、寝んな。ちゃんと勉強しろ」
うるさいなぁ。わかってるってば。
いいよね、幽霊は勉強しなくていいんだからさ。こうやって寝不足になってるのだって誰が原因か分かってんの?
あぁ、ムカつく。
ムッとしながらシャープペンを走らせる。