わたしにしか見えない君に、恋をした。
「そこ間違ってる」

湊が指でノートを叩く。

まったくいちいち細かいなぁ。

どんなにイケメンでもこう細かい性格の男は嫌だ。

シャーペンを怒りに任せて動かすと、

「きったねぇー字だな。流奈、それでもお前女か?」

湊が呆れたように呟いた。

その瞬間、堪忍袋の緒が切れた。

「もう。わかってるっ!!アンタ、いちいちうるさいのよ!!」

思わずそう叫ぶと、教室中の視線があたしに集まった。

「あっ……やばっ……」

口を手で覆ったものの、時すでに遅し。

「ちょっと、流奈ってば大丈夫~?誰と喋ってんのよ~?」

ナナの言葉に教室中がどっと笑いの渦にのまれる。

あぁ、しまった。失敗した……。

穴があったら入りたいと思うぐらい恥ずかしくて顔を真っ赤にするあたしを見て事の発端を作った湊が「バーカ」と言いながらゲラゲラ笑っている。

な、な、なんてやつ!!誰のせいでこうなってんのよ!

怒りを押し殺してノートにシャープペンを走らせる。

【いいかげんにして!!】

人差し指でノートを叩くと、笑いすぎて目に薄ら涙を浮かべていた湊が「分かった。ちゃんと勉強しろよ?」と言い残しスーッとあたしの前から姿を消した。
< 23 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop