わたしにしか見えない君に、恋をした。
サエコに続くようにして歩き、昇降口を抜けると、サエコがぴたりとその場に立ち止った。

「ていうか、流奈ってば何やってんのよ!!アンタのせいで明子に気が付かれちゃったじゃん」

「そうだよ~!!」

サエコとナナは口々に文句を言う。

「でもさっ、明子の焦った顔おもしろかったよね~?」

「ね。今にも泣きそうな顔してたし」

「今度は傘じゃなくて、違うもの隠しちゃう~?」

「あはは。それいいかも」

ケラケラ笑いながらと楽しそうに歩く二人の背中をじっと見つめる。

こんなのを……友達っていうの?

何が楽しくて笑ってんの?

傘を隠すって楽しい?誰かが慌ててるところを見ると笑える?

困ってる姿を見ると面白い?

全然笑えない。楽しくない。おもしろくない。

相手を傷付けても、全然楽しくない。むしろ痛い。

痛くてたまらない。

なんでそんなことが平気でできるの?

人を傷付けてどうして何とも思わないの?

なんでこんな幼稚なことして笑ってんの?

バカじゃん。マジでバカ。信じられないぐらいの大バカ。

「ねぇ、今日どっかよってかない?ていうか、流奈どうしたの?なんでそんなところにいんの?」

数メートル先でようやく振り返ったサエコが不思議そうな顔をする。

あたしが足を止めたことにすら気づいてくれない二人。

あたしなんて置いてどんどん先に行ってしまう。

遠ざかったその距離があたしたちの心の距離のようだ。
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