わたしにしか見えない君に、恋をした。
「……――ごめん。あたし今日は帰る」

ハッキリと理由も告げずに誘いを断ったのは今日が初めてだった。

「マジで~?最近、流奈ってば付き合い悪くない?」

「ね。まっ、いっか。じゃあ、また明日ねー」

ヒラヒラと手を振って去っていく二人。

この後、どうせあたしの悪口を言って二人で盛り上がるに違いない。

今までだったら悪口を言われないかって毎日冷や冷やしてた。

二人に嫌われないようにって気を遣って……。

自分を押し殺して二人に合わせて。

そうすることでなんとか学校生活を送っていた。

言いたいことは喉元まで出かかっているのにそれを言うことをためらう日々。

でも、このままでいいの……?

ずっと言いたいことを我慢して二人に合わせることがベストな選択なの?

ずっとずっと、続けられる?

自分に問いかけても答えなんて出てこない。

でも、これだけはわかる。


このままじゃ、心が壊れてしまう。

< 29 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop