わたしにしか見えない君に、恋をした。
キミは誰
目を覚ました時、時計の針は10時を回っていた。
休みの日だとどうも寝すぎてしまう。
「あぁ~ねむっ」
のそのそと布団からはい出てベッドサイドに座りしばらくボーっとする。
部屋に湊の姿はない。それを確認してから着替えを済ませて遅い朝食を取り終えた頃、部屋の扉からスッと湊が入ってきた。
「起きんのおせー」
なぜか湊は少しだけご機嫌斜めな様子だ。
「いいじゃん、日曜日ぐらい」
「まぁ確かに。でも、俺流奈としかしゃべれないし、すげぇ暇してたんだけど」
「起こしてくれればよかったのに」
「あのさ、俺、さすがに流奈が寝てるときはこの部屋にいないから。一応流奈も女だし」
「一応っていうのが余計!じゃあ、夜はどこにいるの?」
「リビングのソファで寝てる」
「へぇ、湊も寝るんだ?」
「おい、バカにしてんのか?」
「なんて。冗談だってば」
眉間にしわを寄せてあたしを睨むと、湊はベッドに座るあたしの隣に腰かけた。
「ねぇ、そろそろ何か思い出した?」
湊は困ったように肩をすくめた。
「全然」
「じゃあ、まだ自分の名前しかわからないってこと?」
「だな」
「そっかぁ……」
湊があたしの前に現れてから1週間が経った。
自分の名前しかわからないと話していた湊。
湊は少しでも記憶が回復するようにと暇を見つけては色々なところを見て回っているらしい。
でも、残念なことに進展はないようだ。
「ねぇ、湊って……本当に幽霊なのかな?」
「なんだよ急に」
唐突な質問に湊は少しだけ驚いて目を丸くした。