わたしにしか見えない君に、恋をした。

タイムリミット

まだ夏の暑さが抜けきらない９月中旬。

少し歩いただけで汗が噴き出してくる。涼しくなるまでもうしばらくかかりそうだ。

学校から帰ってきたあたしは部屋に入り後ろ手に扉を閉め、真っ先にクーラーをつける。

「ねぇ、湊。４９日って知ってる？」

ベッドの上には湊が座っていた。首筋と額に浮かぶ大粒の汗をタオルで拭う。

「４９日？」

「そう。今日お母さんが親戚の４９日の話をしててちょっとぴんっときたんだよね」

４９日とは人が亡くなってから天国に昇っていく日のことをいうらしい。

簡単にいうと、死んで４９日経ったらこの世をさまよっていた霊が空へあがっていくということ。

「湊がもし本当に死んでるとしたら、４９日経ったらここからいなくなっちゃうってことだよね？」

「まぁそういうことになるな」

「ねぇ、湊ってあたしと出会って何日目だっけ？」

「１０日くらい？」

「もし１０日だとしたら、湊といられる時間はのこり３９日間ってことになるよね？」

「でも、俺、流奈と会う少し前からこのあたりフラフラしてたから」

「何日ぐらい？」

「正確にはわからない」

「ていうことは、一緒にいられる時間は残り３９日を切ってるってこと……？一か月ぐらいしかないの？」

「そういうことかもな」

湊はあっけらかんと言い放つ。でも、わずかに瞳が左右に動いた。
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