わたしにしか見えない君に、恋をした。
「なに?どうしたのよ。何かあった?」

「まぁ、ちょっと」

明らかに普段と違う愁人の表情。

「実は……姉ちゃんにお願いがあってさ」

愁人がベッドに腰かける。

愁人に湊の姿は見えない。でも、部屋の中に3人でいるなんてなんだか不思議な光景だ。

「お願いってなに?」

「あのさ……金山先輩……いるじゃん?」

「うん」

「それで……」

「それでなによ?あたしちょっと今忙しいんだけど」

湊との49日の話も途中だ。

言い渋る愁人にちょっぴり苛立ってそういうと、愁人は意を決したようにこういった。

「金山先輩とデートしてくんない?」

「……はいっ?」

「金山先輩、姉ちゃんのこと気に入っててさ。どうしてもデートしたいんだって」

「えー、なんでよ。あたしが金山先輩のこと嫌いなの、愁人知ってるじゃん」

「知ってるけど、頼むよ……。一回でいいからさ」

「なんで?やなんだけど」

「マジで頼むよ……」

パチンっと両手を合わせてお願いする愁人。

愁人があたしにお願いしてきたことなんてほとんどない。

それなのに、最近変だ。

この間は1万円を貸してくれと言ってきたし、今度は先輩とデート……?
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