わたしにしか見えない君に、恋をした。
「……あたし嫌だよ……。それに先輩モテるし、あたしじゃなくても遊びたい女の子ならいくらだっているでしょ」
「でも、先輩は姉ちゃんがいいって言うんだって」
「そんなこと言われても嫌なものは嫌なんだもん」
「頼む。マジで一生のお願いだから!」
「アンタの一生のお願いは今まで何回あったのよ」
しつこい愁人を睨みつけると、
「なんか流奈の弟、すげぇ切羽詰ってるな」
愁人の顔を覗き込んだ湊が不思議そうに首を傾げる。
確かに湊の言う通り、愁人は焦っているようだ。
ベッドにじっと座っていられないのか、手を動かしたりソワソワと時計の針を気にしている。
普段ならあたしが一度断れば、『ケチ!!』と言ってすぐに諦める。
そもそも、あたしの部屋にやってきてまで何かお願い事をしてきたのはこれで2度目。
それにもすべて金山先輩が関わっているのかもしれない。
「一回でいいから……マジ頼むよ……」
「なんで金山先輩とあたしがデートするのにアンタがそんなに必死になるわけ?」
「それは……――。そうしないと姉ちゃんも困ることに……。いや、だから、俺は――」
言いよどむ愁人。
「……分かった。とりあえず考えておくから」
「ま、マジで?ありがとう、姉ちゃん!!」
「はいはい。じゃあ、その話はまたあとでね」
「了解!!」
ホッとしたような表情を浮かべると、愁人は部屋から出て行った。