わたしにしか見えない君に、恋をした。
「ハァ……。最悪」
「流奈、あの性格悪そうな奴とマジでデートすんの?」
「したくはないけど……」
だけど、愁人があれほどまでに切羽詰ってあたしにお願いしてきたということは絶対に何か裏がある。
金山先輩に脅された……?
もしそうだとしたら、デートの誘いをあたしが引き受けなければ愁人が何をされるか分かったもんじゃない。
「しょうがない。引き受けるしかないか……」
「弟の為に嫌な奴とデートするなんて流奈もいいところあるんじゃん」
「……なにそれ。あたしってそんなに嫌な奴だった?」
「冗談。えらいえらい」
ふっと笑ってあたしの頭をポンポン叩いた湊。
あたしが先輩とデートするって知っても、湊に特に変わった様子は見られない。
そんなの当たり前のことなのにちょっぴり心の中がざわつく。
もしも。もしも湊が他の子とデートするって知ったらあたしは笑ってやりすごす自信がない。
不機嫌になって湊にあたってしまいそうな気がする。
チラッと湊に視線を向ける。