わたしにしか見えない君に、恋をした。

波乱のデート

翌週の日曜日の午後、あたしは駅前で先輩の到着を待っていた。

強い日差しに目を細める。暑い。とにかく、暑い。

「流奈ちゃん、おまたせ~!!」

ゆっくりとした足取りで軽く手を上げてあたしの前まで歩み寄る先輩。

ジーンズにTシャツというラフな格好なのに、背の高い先輩はそれですら様になり周りの女子から視線を集める。

でも、残念ながらあたしは全くといっていいほどときめかない。

「ごめんね、待った?」

「いえ、大丈夫です」

約束は13時。でも、先輩が来たのは13時18分。

待ったに決まってんでしょ、と心の中で舌打ちをしたものの笑顔でやり過ごす。

愁人との約束は先輩と一回デートするだけ。

大っ嫌いだった先輩を今の時点で更に嫌いになった。

「じゃ、いこっか?ていうか、もうお昼は食べたよね?」

「えっ……?」

愁人の話では午前中に部活があり、先輩は一度家に帰って着替えてからすぐに駅前にやってくるということだった。

『先輩が一緒に飯食いたいって言ってたから、姉ちゃんもお昼食わないでいって』

って前もって言われていたからお昼を食べてきていない。

「今日の昼何食った?俺、部活帰りに牛丼食ってきたんだよね~」

「へ、へぇ……。そうなんですね。あたしは別に大したもの食べてないんで」

顔が引きつる。
こんなことになるなら何か食べてくれば良かった。

「じゃあ、行こうか?」

にこりと笑う先輩。

「はい」

先輩に気付かれないようにグーグー鳴り出すお腹に手のひらを当てながら頷いた。

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