わたしにしか見えない君に、恋をした。
あたしの意見なんて何一つ通らない。

聞こうともしてくれない。

こんなのがデートなんて言えるはずない。

ぐっと拳を握りしめる。

愁人に頼まれたわけじゃないなら、もうとっくにあれこれと理由をつけて家に帰っている。

それほどまでに先輩とのデートは苦痛の連続だった。

だけど、もう17時を回っている。

少し休憩したらもう帰ると切り出そう。

あと少しだけ……、あと少しだけ頑張ろう。

自分を奮いたたせると、あたしは先輩の背中を追いかけた。

店に入ると、先輩はポテトと飲み物を注文して席に着いた。

「ハァ、疲れたね~。部活帰りにデートって結構大変だね」

あたしの気も知れずハハッと笑う先輩。

『だったらもう二度と部活帰りにデートなんてしなくて結構ですから』と心の中で答える。

「ていうかさ、流奈ちゃんって休みの日って何してんの?」

「うーん……。特にこれといっては。友達と遊びに行ったりもするし、家にいて本を読んだりもするし。その日によって違いますね」

「へぇ、意外。流奈ちゃんって本とか読むんだ?」

「読みますよ」

「ていっても、漫画でしょ~?」

「漫画も読みますけど、小説も読みます」

「マジで?そうなんだ」

ポテトを頬張りながらしゃべる先輩。
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