わたしにしか見えない君に、恋をした。
「一人で暇してんなら俺らと遊ぼうよ?カラオケとか行く?」

彼から漂うタバコの匂いに思わず顔をしかめる。

すると、あたしの隣にいた湊があたしの手を握った。

「流奈、行くぞ」

湊はぐっとあたしの手を引っ張る。

あたしは湊を見つめて首を横に振った。

「なんでだよ、早くしろって」

もう一度、首を横に振る。

ダメだよ。まだプリントした写真がでてきてない。

それが伝わったのか、湊が眉間にしわを寄せる。

「どうせあの写真には俺の姿なんて映ってない。もし映っていたとしても、今のこの状況を何とかしないとだろ!?」

「……おーい?どうした?」

あたしの肩を組んだ男の子が不思議そうにあたしの顔を覗き込む。

大丈夫だよ、湊。自分で何とかするから。

だから――。

「あたし、暇じゃないです」

そう言いながら肩に回った男の子の腕を解く。

すると、二人はお互いの目を見合わせて口元を緩めた。

「そんな冷たくすんなって」

男の子はそういうと、あたしの腕をガシッと掴んだ。

もう一人の男の子があたしの肩に再び腕を回す。

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