わたしにしか見えない君に、恋をした。
「ごめーん、彼氏がいるって知らなかったから。じゃ、またね」

そう言った瞬間、湊が男の子の胸を左手で押した。

男の子はそのまま後ろにひっくり返り、驚いて目を見開いている。

「なんだ……今の……」

「チッ。お前、何してんだよ」

突然倒れた男の子にもう一人の彼が呆れたように呟いた瞬間、湊は男の子の肩を押した。

男の子はバランスを崩して地面に尻餅をつく。

「な、なんだこれ!!だ、誰だよ!!」

「知らねぇよ!!」

姿の見えない湊に怯えて目を見開く二人。

「流奈、行くぞ」

湊があたしの手を引っ張る。

男の子たち二人は床に座り込んだまま、恐ろしいものでも見たかのように目を見開いてあたしの背中を見送った。
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