わたしにしか見えない君に、恋をした。
「じゃあ、三人四脚やりたい人いませんか?」

あぁ、そうだ。確か3人で三人四脚をやると言っていた。

クラス委員の言葉に慌てて手を上げる。

「いち、に、さん、し、ご……あぁ、結構多いなぁ……。じゃあ、じゃんけんで決めましょう」

やっぱりライバルが多かったか。何気なく周りに視線を走らせた時、ある一点に視線が止まった。

「えっ……」

体中に不快な感情が広がっていく。

斜め前に座るサエコが手を上げていない。

振り返ってナナを見る。ナナも手を上げずあたしの視線から逃げるように窓のほうに顔を向ける。

なに。なんなのこれ。

体中から血が失われているような感覚。

ドクンドクンッと心臓が不快な音を立てて鳴り始めた。

「じゃあ、さっき手を挙げた人は前に出てきてください」

クラス委員の言葉にあたしはよろよろと立ち上がった。

サエコとナナに裏切られた……?まさか、ね。

目の前がかすみ、呼吸が苦しくなる。

どうしてなの?……昼休みまでは普通だったのに。

……普通だと思わせていたの?

きっと昼休みに体育祭の種目の話を出したのも意図的だったはず。

サエコとナナが示し合わせてあたしをハメたのは間違いない。

でも、どうして?あたし……二人に何かした?

教壇のほうへ向かい三人四脚に出たい人の輪に入る。

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