わたしにしか見えない君に、恋をした。
申し訳なさそうな表情を浮かべているのに、口元はわずかに緩んでいた。
「流奈、ごめん!!あたし達ってば二人ともでる種目間違ってたみたい!」
サエコのありえない言い訳に言葉が出ない。
どうせなら、『あたし達二人で他の種目に出たいから、流奈は違うのに出てね』って言ってくれたほうが親切だったのに。
三人四脚に出るという約束だったからここまで他の種目に出ることなんて考えてもいなかった。
「別に……もういいよ」
あたしはサエコにそれだけ言うと席に着いた。
体が鉛のように重たい。
気持ちが沈み、胸の中がザワザワと不快な音を鳴らし続ける。
サエコに何も言い返せなかった自分が情けない。
『ていうか、なんで裏切った訳!?3人で一緒に三人四脚やろうねって約束してたじゃん!あんな約束してなかったらあたし違う競技に出たんだけど!!』
そう心の中で叫んでも声に出すことができない小心者。
どんなにひどい扱いを二人から受けたってあたしはきっと言い返すことができないんだろう。
二人から嫌われ、外されたらもうあたしに居場所はない。
今更他の友達のグループに入れてもらうなんてできっこない。
今までいろんなことが起こってもなんとかうまく立ち回ってきた。
中学校での一件以来、ずっとずっとみんなに合わせて波風立てないように生きてきた。
そうすればみんなと仲良くしていられたから。
そして、今もあたしは自分の気持ちをぐっと抑え込む。
そうすれば、今のあたしの居場所は守られるから……――。