わたしにしか見えない君に、恋をした。
それなのに、高校でもクラス選抜のリレー選手になってしまうなんて。

リレーは体育祭のラストを飾るもっとも注目を集める競技だ。

獲得点数も高く、総合優勝の順位すら左右する。

あたしを含めてリレー選手に選ばれたのは男女各3人ずつの計6人。

その中の大半が運動部に所属している。

運動音痴の帰宅部はあたししかいない。

小学校の時の悪夢を思い出して思わずため息が漏れる。

「……ハァ……」

とその時、ポンッと背後から肩を叩かれた。

振り返るとそこにいたのはサエコとナナだった。

「ちょっと流奈ってば~。落ち込みすぎだから~!!」

あたしの席の前に回り込んでケラケラ笑うナナ。

「まさかリレーの選手に選ばれるなんてね」

サエコが落ち込むあたしの肩を励ますようにポンポンッと叩く。

もくろみ通り二人三脚にでられることになった二人はあたしがリレーに出ようがなんだろうがどうせ他人事なんだろう。

「もう決まったことだし、今さらクヨクヨしたってしょうがなくない~?」

机の横のバックに手を伸ばしたとき、「でもさ」とサエコが口を挟んだ。

「そんなにリレーに出るのが嫌なら誰かに代わってもらえばよくない?」

思わずうつむいていた顔を持ち上げた。
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