わたしにしか見えない君に、恋をした。
「あたし……昔から周りの目とかすごい気にするタイプなの。誰にどう思われてるんだろうとか、こんなこと言っちゃダメだったかなとか色々考えちゃう」

湊は黙ってあたしの話に耳を傾けている。

「多分、自分の中にこういう人間になりたいっていう理想の自分がいるの。でも、その理想に今のあたしは全然追いつけなくて。それどころか酷い部分ばっかりが目につくの。みんなより自分が劣っている気がする。だから……自分がどんどん嫌になっていく」

指先が震える。すると、湊は震えるあたしの手をギュッと握り締めてくれた。

「自分に自信がないの。どうしたらいいのか分からない。友達関係も全然うまくやれない。うまくやろうとすればするほど、誰かを傷付ける。明子のことだってそう……。あたしは明子を裏切った」

そこまで言うと涙が溢れた。

沸き上がってくるのは明子を傷付けたという罪悪感だった。

「みんなそうだろ。どうすればいいのかなんてわからない。未来がどうなるのかも誰にも分からない。だから答えを探すために必死に生きてるんじゃね?」

「答えを探すために……?」

「答えが探し出せるかどうかはわからない。でも、流奈にとっては今がその答えを見つけるチャンスなのかもな」

「今が……?」

「つーか、自分のこと劣ってるとかいうなって。流奈は流奈じゃん」

湊はふっとやわらかい笑みを浮かべた。
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