わたしにしか見えない君に、恋をした。
心の声
翌日から体育祭の練習が始まった。
全体練習だけでなく、個別の種目の練習も合わせて行われる予定だ。
体育着姿のクラスメイト達の中になぜか明子の姿がない。
辺りを見渡してもどこにもその姿がない。
すると、あたしの気持ちを見透かしたようにナナが唇を尖らせた。
「明子、今日見学なんだって~。しょっぱなからサボりとかなくない?」
「そうなんだ……?」
明子が見学なんて珍しい。
「リレーの練習やるのが嫌でサボってるのかもよ?よかったね、流奈。あの子に押し付けられて」
サエコとナナの言葉にはトゲがある。
体育祭の練習は1、2限通して行われる。
全体での並びや動きの流れが終わったとき、担任に声をかけられた。
「おい、秋月。お前、平山と仲良かったよな?」
「え?」
「少し具合が悪いから教室にいるって言ってたんだけど、心配でな。ちょっと様子を見てきてやってくれ。もしもダメなら保健室にいくか早退するように伝えてくれ。俺はちょっと手が離せなくてな」
体育教師である担任が持ち場を離れるわけにはいかないのもわかる。
「でも……」
「心配しなくても大丈夫だ。お前の出る種目は明日練習予定だから。じゃあ、頼むな」
あっけらかんと言うと小走りに去っていく担任。
そういう心配じゃないのに……。
心の中で呟くと、あたしはサエコとナナには何も告げずにコソコソと隠れるように教室を目指して歩き出した。