居候同期とフクザツな恋事情
「メェちゃんて、松野のことが好きなの?」
イオの言葉に、スマホを持つ手が滑った。
危うくテーブルに落としそうになったそれを、ギリギリのところで受け止めて握りしめる。
「ど、どうして?」
「だって、松野からのメッセージ見てずっとニヤけてるから」
「そ、そんなことないよ。松野くんが予約してくれたお店の料理が美味しそうだなーって思って見てただけだし」
スマホの画面をイオのほうにむけて、ちょうど開いていた料理の写真を見せる。
だけど、それは冷めた目をしたイオの手によって、あっさりと退けられた。
「すごい慌ててる」
低い声でつぶやいたイオが、クスリと笑う。
その笑顔がこの2週間間で見た彼のどんな笑い方よりも冷たかったから、ぞくりとした。
「だって、イオが急に変なこと聞くから――……」
「別に変なことなんて聞いてないよ。いいじゃん?松野。あいつ、イケメンだし、いいやつだし。ふつーにうまくいけばいいね」