居候同期とフクザツな恋事情
「あのね、イオ。私、ドタキャンするつもりの約束だったら最初からしないよ?」
「え?」
「パンケーキは、イオのこと励ましたいなって気持ちももちろんあったけど、イオと行きたいと思ったから誘ったんじゃん。最初は同居なんてちょっとどうかと思ってたけど、最近はあんたと一緒にスイーツ食べるのとか、ゲームするのとか?そういうの、わりと楽しいし」
右手をグーに握ると、まだほんの少し胸に燻る苛立ちとともに、イオの肩に軽くぶつける。
だけどそうなる直前で、私のこぶしは丸ごとイオの手のひらに包まれた。
「メェちゃん。そういうの、こんなふうに近い距離で言われたら、ふつーは結構ドキドキしちゃうから」
「え?」
「だから、ちゃんとよーく考えて、ほんとに好きなやつに言ったほうがいいと思う」
私から顔を背けたイオが、手を下におろしてそこに包んでいた私のこぶしを解放する。
「ほら、松野、とか?」
茫然と横顔を見つめると、イオが視線だけをこちらにちらっと向けてはにかんだ。